「何か貸そうか?」って言ったら「これ。」って着てたパーカー引っ張られて。
「これ?」「うん。」「これでいいの?」「オレンジだもん。」物言いまで子供っぽくて。
「洗って貸すよ。」「今。すぐ。」せがまれて、その場で脱いで。すぐ着られて。
ガタイはそこそこある俺にも大きめのパーカー、よく着てた部屋着で、くたびれてたやつ。
彼女にはかなり大きくて、丈も長くてブカブカで。立つと膝くらいまで届いて。
袖に手入れたまま握って。体操座りで足すっぽり入れて。こっち見上げて。
「あは。やっぱり。」もたれかかってきて。「ん?」「あったかいです。」満足そうに笑って。
とにかく可愛くて。彼女が笑ってると安心してしまう自分に気付いた。
十二月に入ってすぐ。「冬休み、どうするんですか?」彼女におずおずと聞かれて。
反射的に「忙しいから帰らない。」とか適当言って、年末年始も家に帰らない事に決めた。
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