すごか仕事
しのぶ君の授業参観へ行った時のことです。
授業で「ご両親の仕事はなんですか?」という質問に、しのぶ君は小さく「普通の肉屋です」と答えました。
その日しのぶ君は帰宅してから、学校で先生に言われた事を坂本さんに説明しました。
先生「坂本、何でお父さんの仕事ば普通の肉屋て言うたとや?」
しのぶ君「一回、見たことがあるばってん、血のいっぱいついてからカッコわるかもん…」
先生「坂本、おまえのお父さんが仕事ばせんと、先生も坂本も校長先生も肉ば食べれんとぞ。すごか仕事ぞ
一気にそこまで話してから最後に、「お父さんの仕事はすごかとやね!」と言います。
坂本さんはもう少し仕事を続けようかなと思いました。
みいちゃん
ある日、牛を乗せたトラックが職場にきました。
助手席から降りた少女が荷台に上がっていきます。
少女は牛のお腹をさすりながら、牛にこのように語りかけていました。
「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃんば売らんとみんなが暮らせんけん。ごめんねぇ…」
一緒に来ていたおじいさんが、坂本さんに頭を下げてこう言います。
「坂本さん、みいちゃんはこの子と一緒に育ちました。ばってん、みいちゃんば売らんとこの子に何も買ってやれんとです。明日はどうぞよろしくお願いします」
翌日、坂本さんは渋い顔をしつつ仕事に行きました。
「みいちゃん、ごめんよう。じっとしとけよ。動いたら急所をはずすけん、そしたら余計苦しかけん。」
と伝えます。
いよいよ解体の時、みいちゃんは泣いていました。
命をいただく
次の日、おじいさんがやって来てこう話しました。
「坂本さんありがとうございました。昨日、あの肉を少しもらって食べました。孫は泣いて食べませんでしたが、『みいちゃんにありがとうと言うて食べてやらな、みいちゃんがかわいそうかろ?食べてやんなっせ。』って言うたら、孫は泣きながら、『みいちゃんいただきます。おいしかぁ。て言うて食べました。ありがとうございました」
坂本さんは、もう少しこの仕事を続けようと思ったそうです。
食事の時は命をいただくという事を忘れず、感謝を込めて「いただきます」と言いたいものです。
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出典:西日本新聞