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元戦艦大和の乗組員は、上官の命が犠牲となって生き延びた→彼が語るあの壮絶な瞬間から学ぶべきことを心に刻みたい…!


生きること、生き延びること

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飛び込んだのも束の間、八杉氏は沈む大和が生み出す渦の中へ巻き込まれてしまいました。

その時、彼の頭に過ったのは、海軍で教わった「生きるための数々の方策」でした。

海軍で八杉氏が教わったのは、ひたすら「生きる」ということでした。

「海で溺れた時、どうしても苦しかったら水を飲め」

「漂流した時は体力を消耗してしまうから泳いではならない」

陸軍では違ったのかもしれませんが、海軍で

は「お国のために死ね、天皇陛下のために死ね」などと言われたことは一度もなかったのです。

ひたすら「生きること、生き延びること」を教わったのです。

ですから八杉氏は、この時も海の渦に巻き込まれた時の対処法を思い返し、そして実践しました。

しかしどんどん渦に巻き込まれあまりの水圧と、酸欠を引き起こしたことで彼の意識は次第に薄れていきました。

その時、ドーンという轟音とともにオレンジ色の閃光が走りました。

戦艦大和の爆破です。

そこで八杉氏の記憶は途切れました。

頑張って生きろ

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気が付くと、八杉氏の身体は水面に浮きあがっていました。

幸いなことに、爆発の衝撃で水面に押し出されたようでした。

しかし懸命に泳ぐものの次第に力尽きてきて、彼は重油がそこら中に漏れた海の水を飲み込んでしまったのです。

「助けてくれ!」

八杉氏は叫びました。

叫んだと同時に、なんともいえない恥ずかしさが込み上げてきました。

「この期に及んで情けない、誰にも聞かれていなければいいが…」

すると八杉氏のすぐ後ろに、彼の上司である川崎勝己高射長がいました。

「軍人らしく黙って死ね」と怒られるのではないか。

そう思って身構えた八杉氏に対し、川崎高射長は優しい声で言いました。

「落ち着いて、いいか、落ち着くんだ」

そうして、自分がつかまっていた丸太を押し出したのです。

続けてこう言いました。

「もう大丈夫だ。お前は若いんだから、頑張って生きろ」

4時間に及ぶ地獄の漂流の後、川崎高射長は救助を始めた駆逐艦に背を向けて、

大和が沈んだ方向へ泳ぎ出しました。

高射長は大和を空から守る最高責任者でした。

『大和を守れなかった、その思いから、死を以て責任をとられたのだ』

八杉氏はそのように思いました。

そしてこう感じ取りました。

『高射長が私にくださったのは、浮きの丸太ではなく、彼の命そのものだったのだ』

川崎高射長の墓前で

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昭和60年のこと。

八杉氏はいつもピアノの発表会などで顔を合わせていた女性から、喫茶店に呼び出されました。

彼女は辺見じゅん氏の『男たちの大和』を取り出すと、こう言いました。

「八杉さん、実は川崎勝己は私の父です」

その時の感情は驚いたなどという範疇ではなかった、と八杉氏は振り返ります。

戦後、八杉氏は何とかして川崎高射長の墓参りをしたいと思い、

厚生省など方々に問い合わせましたが、何の手がかりも掴めずにいました。

それなのに前から知っていたこの人が、川崎高射長の娘だとは思いもしなかったのです。

念願叶って佐賀にある川崎高射長の墓前に手を合わせることができましたが、

そこでまたひとつ、墓石に記されたものを見て驚かされました。

「享年31歳」と記されていたのです。

八杉氏は、川崎高射長がもっと年上の人だと思い込んでいたのです。

その時八杉氏は50歳を超えていましたが、

自身が31歳だった時を思い返すと、ただただ恥ずかしい思いでいっぱいになりました。

そして不思議なことに、それまでの晴天が急に曇天になったかと思うと、

まるで「17歳のあの日」が巡って来たかのように突然の雷雨となったそうです。

天皇も国家も関係ない、自分が愛する福山を、そして日本を守ろうと憧れの戦艦大和に乗った時の感動。

浮沈戦艦と言われた大和の沈没、原爆の投下によって被爆者になり、そして敗戦。

そのすべてが17歳の時に一気に起こったのです。

17歳は現在だと高校2年生にあたります。

日本に誇りを持っていますか?

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「最近は学校関係へ公演に行く機会もありますが、現在の学生の姿を見ると明らかに戦後の教育が間違ったと思わざるを得ません」

八杉氏はそう語ります。

学校の生徒たちだけが間違っているのではありません。

その前の世代の間違った教育を受けた人が先生となり、親となって地域社会を動かしている。

八杉氏にはそのように感じられてならないのです。

その元凶はなにか、と彼に問えば「昭和史を学ばないこと」だと答えます。

自分の両親、祖父母、曾祖父母がどれほどの激動の時代を生きてきたかを知らずに、

いくら石器時代を学んだところで真の日本人になれるはずがない、と八杉氏はそう思うのです。

現に八杉氏が「日本に誇りを持っていますか」と聞くと、学校の先生ですら

「持ってどうするんですか?」と真顔で聞き返すのだそう。

「よく『日本は平和ボケ』などと言われますが、

毎日のように親と子が殺し合うこの日本のどこが平和ですか?」

八杉氏は言います。

「確かに昔も殺しはありました。しかし、

『殺してみたかった』などと、意味もなく殺すことは考えられませんでした」

真の平和とは歴史から学び、作り上げていくほかない。

鶴を折ったり、徒党を組んでデモをすれば天から降ってくるものではない。

八杉氏はこのように感じているそうです。

ところが一流の国立大学の大学院生ですら

「昭和史は教えてもらっていないので分かりません」 と平気で答えるのがこの国の現状だと言います。

「ならば自分で学べ」と八杉氏は言います。

自分で学び、考えることなしに自分の生きる意味は分かるはずがないのだと八杉氏は感じているとのこと。

人として生きた証

「人として生きたなら、その証を残さなければなりません」

「大きくなくてもいい、小さくても、精一杯生きた証を残して欲しい。

戦友たちは若くして戦艦大和と運命を共にしましたが、

いまなお未来へ生きる我々に大きな示唆を与え続けているのだ」

八杉氏はこのように語ります。

復員後、長く八杉氏の中で渦巻いていた「生き残ってしまった」という罪悪感。

それは今、使命感に変わっていると言います。

八杉氏の一生は彼だけの人生ではなく、生きたくても生きられなかった戦友たちの人生でもあるのです。

「うかうかと老年を過ごし、死んでいくわけにいきません」

八杉氏は言います。

「未来の日本を託す若者たちが歴史を学び、真の日本人になってくれるよう私は大和の真実を語り続け、いつか戦友たちと会った時 『俺も生かされた人生でこれだけ頑張った』 と胸を張りたいと思います」

迷いなく、彼はそう言いました。

私たちが生きていく未来

いま私たちが平和に笑って暮らしていられるのは、あの時命をかけて守ってくれた方々のおかげです。

その戦没者の方々が生きたかった未来を生きているのが、私たちです。

改めて日々、感謝を込めて精一杯生きていくと共に少しずつでも昭和史を学び、

当時のことをもっと詳しく知りたい、とそんな風に感じますね。

「若者よ、君たちが生きるきょうという日は死んだ戦友たちが生きたかった未来だ」

辛いことが起こった時、この言葉を思い出して自分を奮い立たせてみてはいかがでしょうか。

出典:致知出版社

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コメント

  1. のらエモン より:

    感謝の気持ち、悼む気持ちに思想の左右は関係ない。そこには政治はもとより人種の違い、宗教すら入り込む余地は無い。
    穏やかに日々を過ごせる事に、ただただ感謝の気持ちを忘れず穏やかに過ごすのみ。

  2. みすぎ より:

    「未来の日本を託す若者たちが歴史を学び、真の日本人になってくれるよう私は大和の真実を語り続け、いつか戦友たちと会った時 『俺も生かされた人生でこれだけ頑張った』 と胸を張りたいと思います」

    真の平和とは歴史から学び、作り上げていくほかない。
    鶴を折ったり、徒党を組んでデモをすれば天から降ってくるものではない。

    > 鳥肌が立ちました。三十代です。私も生かされた人生のなかで、必ず胸を張れるよう友と行きたいと思います。

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